この記事では、「赤字会社がM&Aで売却できるか?」について、事例を含めて解説します。
赤字・債務超過の会社でも売れるケース、売れないケースを説明していますので、赤字、債務超過でM&Aでの売却をご検討中のオーナーの役に立つ情報かと思います。
はじめに|赤字会社のM&A売却は「不可能」ではない
「うちは赤字だから、M&Aなんて無理だろう」と諦めているオーナーは少なくありません。
しかし赤字会社のM&A売却は不可能ではありません。実際に赤字・債務超過であっても売却に成功した事例が存在します。
一方で、赤字会社のM&Aには通常の案件と異なる難しさがあることも事実です。
売れる会社と売れない会社の差はどこにあるのか。
本記事では、実際の事例を交えながら赤字会社のM&A売却の現実をお伝えします。
私はM&A業界に10年以上携わり、赤字・債務超過の会社の売却支援も手がけてきました。
その経験から、赤字会社のオーナーが知っておくべきことをお伝えします。
赤字会社のM&A売却|実際に売れた事例
万年赤字・債務超過の水産養殖会社が1億円で売却できた理由
ある水産養殖会社の事例です。
この会社は地域でも名の知れた会社でしたが、販路構築の失敗と餌代・流通コストなどの原価高騰により万年赤字で、債務超過に陥っていました。
年々赤字幅は拡大する一方で、過去の決算数値で評価すれば1億円の値段がつくことはまずあり得ない会社でした。
それではなぜこの会社に1億円もの値段がついたのか。
理由は3つあります。
1つ目は、買い手が売り手の養殖する魚をより高く販売するノウハウを持っており、販売先を変えることで単価の上昇が見込めたからです。
2つ目は、売り手が所有する養殖場が買い手にとって希少価値の高い場所だったからです。
買い手はその地域への進出を狙っていましたが、新規で養殖池を作れない・水源を確保できないといった問題から新規参入が困難でした。
3つ目は、買い手が餌を安く仕入れるパイプと独自の物流網を持っており、買収後の短期間でコスト削減が可能と判断したからです。
過去の業績だけを見れば到底1億円の価値がつかない会社でも、買い手にとっての将来価値によっては高い評価がつくことがあるのです。
赤字会社でも売れる会社の3つの特徴
共通点は「買収後に黒字化の見通しが立つか」
赤字・債務超過の会社を買収する買い手は人助けで買収するわけではありません。
買収によって自社が利益を得られると判断するから買収するのです。
仮に買い手から「地域からあなたの会社を失わせるわけにはいかない」などと熱い言葉をかけられても、古くからの付き合いでもない限り、その裏には必ずビジネス上の計算が働いていると考えるべきです。
では買い手はどこを見て「買収後に収益化できる」と判断するのでしょうか。
特徴① コスト削減の余地がある
買い手が最初に確認するのはコスト削減の余地です。
外部環境に依存せず自助努力で収益力を高められる項目のため、最も実現可能性が高い利益改善ポイントとして真っ先に確認されます。
中小企業M&Aでよく出てくるコスト削減項目としては以下があります。
- 役員報酬・法定福利費(オーナーが引退する場合)
- 節税保険などの生命保険料
- 接待交際費・会議費・旅費交通費(オーナーの私的利用分)
- 地代家賃(オーナーや親族の社宅)
これらは会社の事業運営に不要なコストであり、買収後に削減できる余地として評価されます。
仕入れや物流の共通化によるコスト削減も評価ポイントになりますが、これは買い手がそのようなネットワークを持っているかによって異なります。
特徴② 買い手のビジネスへの応用可能性がある
2つ目のポイントは応用可能性です。
売手のビジネスは買い手の既存ビジネスへの横展開が可能か、あるいは売り手の既存ビジネスを買い手のリソースを活用して横展開できるかという観点です。
先の水産養殖会社の事例では、販売先に困っていた売り手の商材を、買い手が持つ強固な飲食店ネットワークへ販売することで単価を上げ売上を伸ばせる可能性が高いと買い手が判断しました。
ただしこの点も買い手がどのようなリソースを持っているかに依存するため、全ての買い手に当てはまるわけではありません。
特徴③ 希少性・参入障壁が高い
3つ目のポイントは希少性です。参入障壁の高さとも言えます。
この点は売り手独自の経営資源であるため買手の有するネットワークに依存はしませんが、買い手がその希少性をどれだけ高く評価するかによって売却金額も大きく変わります。
先の事例では、買い手はその地域でビジネスをしたかったものの新規参入が困難で、まさにそこに養殖場を持つ会社のM&A案件が出てきたため飛びついたという経緯がありました。
さらに希少性が高い場合、ライバル企業に買われたら取り返しのつかないことになると判断して、想定を大きく上回る金額がつくこともあります。
赤字でも売れる会社の本質
繰り返しになりますが、売り手の経営資源を活用して買い手がどれくらい儲けられそうかという点が、赤字会社が売れるか売れないかの最大の境界線です。
過去の業績も当然検討の材料にはなりますが、売手の持つ経営資源が買手のためにどう役に立つのか。
赤字会社の売却の際は、これを徹底的に深堀りすることが不可欠となります。
そして売手が持つ経営資源は言語化して買手に伝えなければ買手の評価が高まることはありません。
そのため、売手は自社の経営資源が何かをしっかりと言語化して整理しておく必要があるのです。
赤字会社でも売れない会社の特徴
売れる会社の逆が売れない会社です。
買収しても黒字化の見通しが立たないと判断された会社は売れません。
具体的には以下のような状況です。
- 保有する経営資源が代替可能(買い手が自社で1から始められる)
- 近い将来、資金ショートが見えておりテコ入れの時間すらない
- 構造的な赤字債務超過(業界自体が斜陽産業など)
このような会社が赤字債務超過である場合は、買手を見つけることが非常に難しいと考えておいた方がよいでしょう。
「特許があるから売れる」は必ずしも正しくない
特許を保有していて「うちは唯一無二の技術を持っているから売れる」と考えるオーナーもいます。
確かに特許の保有は希少性の観点からプラスに働く可能性があります。
しかし買い手はシビアに以下を確認してきます。
- その特許は今現在、収益を生んでいる特許か
- 代替できる技術は他にないか
- その特許を使ったプロダクトの開発にどれくらいの期間と投資が必要か
自社の経営資源がどのように収益を生み出せるかを説明できない赤字会社には、いかに唯一無二の特許を有していたとしても、残念ながら買い手がつく可能性は極めて低いのです。
債務超過の会社が注意すべきこと
赤字よりもさらにM&A売却難易度が上がる
債務超過は赤字のみの会社よりも一層売却が難しくなります。
理由は2つあります。
1つ目は、上場企業は上場維持の観点から基本的に債務超過の会社を株式譲渡で買わないからです。
これにより買い手候補が大幅に絞られます。
2つ目は、銀行が追加融資をしてくれなく運転資金不足に陥ることが多いからです。
資金繰りに困ってリスケをしてしまうと、どの金融機関からも借入ができなくなります。個人保証もなかなか外してもらえません。
悪質な買い手の餌食にならない
債務超過の会社で特に注意すべきなのは悪質な買い手の存在です。
債務超過であっても会社内に現預金が残っているケースは多々あります。
売り手のオーナーはジリ貧になる前に会社を託したいという思いで売却を決意しますが、その弱みにつけ込む買い手が存在しているのです。
具体的には、買収後に売り手の資金を親会社に吸い上げる、売り手の法人カードで飲み食いし放題、しかし契約上の約束である連帯保証を外さないといったパターンです。
悪質な買い手が狙いをつけるのが債務超過に陥った会社です。
このような買い手に売却しないよう十分注意してください。
悪質な買い手の見極め方については以下の記事も参考にしてください。
赤字会社のオーナーが相談すべきタイミング
手遅れになってから来るケースが多い
赤字会社のオーナーが相談に来る典型的なパターンは、経営が立ち行かなくなったタイミングです。
半年後には運転資金がショートする、近々納税資金が用意できなくなるといった段階での相談が多いです。
このような段階まで来ると打てる手立ては非常に限定的になります。
M&Aというよりもどちらかといえば事業再生手続きに進まざるを得ないケースがほとんどです。
理想的な相談タイミング
理想的な相談タイミングは債務超過・赤字になる前です。
しかし少なくとも以下のどちらかの状況になったら相談することをおすすめします。
- 債務超過に陥りそうと感じたとき
- 1期赤字になってしまいその先の業績も不透明であると感じたとき
この段階であればまだ打てる選択肢を一緒に検討することができます。
なお、中小企業庁の中小M&Aガイドラインでも、早期の相談・情報収集の重要性が明記されています。
(参考:中小企業庁 中小M&Aガイドライン(第2版) -第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-)
まとめ|赤字会社のM&A売却で後悔しないために
赤字会社のM&A売却について解説してきました。重要なポイントをまとめます。
売れる赤字会社の共通点はコスト削減余地・応用可能性・希少性の3つです。
いずれも「買収後に買い手が儲けられるか」という観点から評価されます。
売れない赤字会社は経営資源が代替可能で買収後の収益化が見込めない会社です。
債務超過になると単なる赤字よりもさらに売却難易度が上がり、悪質な買い手に狙われるリスクも高まります。
相談タイミングは早いほど選択肢が広がります。
仲介会社の選び方については以下の記事も参考にしてください。
よくある質問|赤字会社のM&A売却
赤字が続いている会社でも相談できますか?
はい、相談できます。
赤字の段階・期間・原因によって打てる手立てが変わりますので、早めにご相談ください。
赤字が深刻化するほど選択肢が狭まります。
債務超過でも売却できますか?
売却できるケースはあります。
ただし赤字よりも難易度が上がります。
買い手候補が限定され、買収後の黒字化見通しが明確でないと難しいのが現実です。
赤字会社を売却する場合、売却価格はどうなりますか?
赤字会社の売却価格は過去の業績よりも将来の収益見通しに基づいて決まります。
コスト削減余地・買い手のシナジー・希少性によっては、業績が赤字でも相応の価格がつく場合があります。
M&Aの検討を途中でやめることはできますか?
はい、できます。
M&Aプロセスはいつでも中止することができます。
相談だけして、その後業績が回復してM&Aを中止しても問題ありません。
まずは情報収集から始めることをおすすめします。
ツギテラスへのご相談
ツギテラスでは赤字・債務超過の会社の相談も承っています。
まずは現状の整理と選択肢の確認から始めます。
「少しまずいかもしれない」と感じた段階での相談が最も選択肢を広げることができます。
完全成功報酬型のため、相談して売却しなかった場合の費用は一切発生しません。
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