この記事でわかること
- M&A売却のタイミングを誤るとどうなるか(実例あり)
- 業績面・年齢面・外部環境面から見た売却の最適タイミング
- 「まだ早い」と思っているオーナーが陥りやすい落とし穴
- M&Aで高く売れる会社・売れない会社のタイミングの違い
はじめに|M&A売却のタイミングが成否を分ける
M&Aで会社を売却するとき、「いつ売るか」という売却のタイミングは「誰に売るか」「いくらで売るか」と同じくらい重要な判断です。
実際にM&A業界に10年以上携わってきた経験から感じるのは、「もう少し早く相談に来てもらえれば、もっといい結果になったのに」というケースが非常に多いということです。
業績が悪化してから、体調を崩してから、従業員が高齢化してから
——そのタイミングで相談に来ても、打てる手立ては大きく限られてしまいます。
本記事では、M&A売却のタイミングを誤ってしまった際の実例と、最適なタイミングを判断するための具体的な基準をお伝えします。
タイミングを誤ったM&A売却の実例|老舗設計事務所の後悔
業歴40年の設計事務所が買い手を見つけられなかった理由
業歴40年を超える老舗設計事務所の事例です。
社長は70歳近くになり後継者もいないことから、売却を決意してご相談にいらっしゃいました。
設計事務所は本来、買い手がつきやすい業種です。しかしこの会社には深刻な問題がありました。
従業員の平均年齢が60歳を超えており、M&Aにおいて重要な経営資源とみなされる有資格者(一級建築士)の社員の年齢も65歳を超えていたのです。
会社全体で高齢化が進んでいたため、なかなか買収に名乗りを上げる買い手が見つかりませんでした。
さらに問題があります。
もともと20〜30代の若手社員が何名かいましたが、会社が先細りになっていく中でベテラン社員が目の前の仕事をこなすことに精一杯になり、若手の教育にまで手が回らなくなっていました。
結果として、高い設計技術を学べると期待して入社した若手が辞めてしまい、若手の育成ができていませんでした。
これが買い手がつかなかった大きな原因のひとつとなってしまい、結果的に思うような売却には至りませんでした。
この事例から学べること
この設計事務所の問題は、売却を決意した瞬間に生まれたわけではありません。
数年・数十年かけて徐々に積み重なった問題が、売却のタイミングで一気に表面化したのです。
もし5〜10年前に売却を決断していれば、若手社員がまだ在籍していた状態で、全く異なる結果になっていた可能性がありました。
これが会社の売却にはタイミングも重要という理由となります。
M&A売却の最適タイミング|3つの観点で判断する
M&A売却のタイミングを判断するには、業績面・年齢面・外部環境面の3つの観点が必要です。
観点① 業績面|業界の将来見通しまで含めて判断する
売却の最適タイミングとして最もわかりやすいのは、会社の業績が良いときです。
買い手は業績の良い会社を高く評価し、複数の買い手が競合すれば売却価格も有利になります。
しかし業績が良いときに売却を決断するのは、感情的に非常に難しいことです。
「まだこんなに調子がいいのに会社を売却するなんてとんでもない」と考えるオーナーがほとんどです。
ここで重要な視点があります。
自社の業績が良くても、自社が属する業界・マーケットの将来見通しが明るくないのであれば、それは売却を検討しはじめるタイミングになるということです。
M&Aの買い手は、その会社の収益力はもちろんですが、その会社が属する業界が今後どれくらい成長ポテンシャルを秘めたマーケットであるのか(成長が継続するか)という点も買収価格に反映させます。
つまり、自社の調子が良くても業界の将来性が低ければ、買収価格はネガティブに評価されます。
具体的な例として、SES(システムエンジニアリングサービス)会社があります。
もともとSES会社は買収の人気業種であり高値で買収されてきました。
しかし最近のAIの台頭によってSESエンジニアを雇うよりも自社でAIを活用した方が安くて融通も利くと考える企業が増えてきたことで、「SES会社の高収益率は長くは続かない」という見方から、買収価格が大きく下がり始めています。
自社の業績と業界の将来性をセットで判断することが、売却タイミングを見極める上で不可欠になるのです。
観点② 年齢面|社長65歳がタイムリミット
売り手オーナーの年齢について、65歳が一つのタイムリミットと考えています。
人生100年時代といえども、65歳からは一般的に「前期高齢者」です。
M&Aの買い手は、引き継ぎの途中でオーナー社長が体調を崩して引き継ぎが完了できないというリスクを想像します。
75歳を過ぎた後期高齢者になると、その懸念は一層強まり、オーナーの年齢だけで買い手から断られるケースもあります。
また従業員の平均年齢も重要です。
従業員の平均年齢が40代前半のうちに売却を決めた方が良いと考えています。
経験則から、平均年齢が40代後半になると、買い手から「年齢が高いですね」と言われることが圧倒的に増えます。
先述の設計事務所の事例がまさにその典型です。
観点③ 外部環境面|業界再編の波を逃さない
大手企業同士が業界再編を始めたら、その業界の中小企業にも今後M&Aの流れが来ると考えておいた方が良いです。
大手が業界再編をするということは、自社単独での競争力維持・生き残りが難しくなってきている証拠です。
大手企業でも単独での生き残りが難しいのであれば、中小企業はより一層難しくなります。
そして業界再編の波に乗ることができれば、自社の生き残りを達成しながらM&Aでの売却先も見つけやすくなります。
逆に業界再編トレンドが一巡してしまうと、その業界でのM&A意欲が落ち着き、買い手も減ってしまいます。
大手企業同士の業界再編が起きたタイミングは、中小企業にとってのM&Aの売り時と捉えることができます。
M&A売却のタイミングに関する3つの落とし穴
落とし穴① 「業績が悪くなってから考える」は手遅れ
赤字が続いている、債務超過に陥った、資金繰りが厳しくなったタイミングでM&Aを考え始めるオーナーが非常に多いです。
しかしこの段階になると、M&Aよりも事業再生手続きに進まざるを得ないケースがほとんどです。
業績が悪化すればするほど買い手候補は減り、買収価格は下がります。
「追い込まれてからのM&A」は、売り手にとって最も不利な状況です。
赤字会社のM&Aについては「赤字会社はM&Aで売却できる?|債務超過・業績不振でも売れるケースと売れないケース」でも詳しく解説しています。
落とし穴② 「後継者問題を先送りにする」
後継者がいないことはわかっているが、まだ自分が元気なうちは考えなくていいと先送りにするオーナーは多いです。
しかし後継者問題の解決には時間がかかります。
親族内承継・従業員承継・M&Aのいずれも、準備から完了まで最低でも数年かかります。
「そろそろ考えなければ」と思ったときには、すでに選択肢が狭まっているケースが少なくありません。
事業承継の選択肢については「後継者がいない会社はどうする?事業承継3つの選択肢を比較」で詳しく解説しています。
落とし穴③ 「M&Aは最後の手段」という思い込み
M&Aは事業承継の最後の手段ではなく、選択肢のひとつです。
業績が良いうちに戦略的にM&Aを活用することで、より高い価格・より良い条件での売却が実現できます。
「まだ早い」という思い込みが、結果的にタイミングを逃す最大の原因になっています。
M&A売却タイミングの目安まとめ
| 売り時のサイン (ベストタイミング) | 注意すべきサイン (ワーストタイミング) | |
|---|---|---|
| 業績 | 業績が良く利益が出ている | 赤字・債務超過に陥っている |
| 業界 | 業界再編が始まった直後 | 業界が斜陽化・再編が一巡した後 |
| オーナー年齢 | 65歳以前 | 75歳以上 |
| 従業員年齢 | 平均年齢40代前半まで | 平均年齢50代以上・若手が育っていない |
| 後継者 | 候補はいるが不確定 | 後継者不在が確定している |
まとめ|M&A売却タイミングで後悔しないために
M&A売却のタイミングに関する重要なポイントをまとめます。
ベストな売却タイミング
- 業績が良いうちに動くことが原則。しかし、業界の将来性も合わせて判断することが重要
- オーナーの年齢は65歳、従業員の平均年齢は40代前半が目安
- 大手企業の業界再編はM&Aの好機のサイン
M&Aプロセスは相談から成約まで平均6ヶ月〜1年かかります。
「3年後くらいに売却したい」と考えているなら、今すぐ情報収集を始めることをおすすめします。
M&Aプロセスはいつでも中断することができます。
そのため、「まずは情報収集だけ」という段階でも構いません。
動き出すことで初めて見えてくる選択肢があるはずです。
よくある質問|M&A売却のタイミング
業績が良い今、売却するのはもったいないですか?
もったいなくありません。
業績が良いときこそ最も高い価格で売却できるタイミングです。
業績が良いうちに売却することは、長年会社を育ててきたオーナーにとって最善の選択のひとつです。
何歳までに売却するのがベストですか?
オーナーの年齢として65歳を目安に考えることをおすすめします。
65歳を超えると買い手が引き継ぎリスクを懸念し始めます。
ただし健康状態や会社の状況によっても異なりますので、早めに専門家に相談することをおすすめします。
M&Aを検討し始めてから成約まで何年かかりますか?
一般的に相談から成約まで6ヶ月〜1年程度かかります。
成約後の引き継ぎ期間も含めると、引退まで1〜2年は見ておく必要があります。
「3年後に引退したい」と考えているなら、今すぐ動き出すべきタイミングです。
まだ売却を決めていないが相談できますか?
もちろんです。
「情報収集だけしたい」「売却すべきかどうか迷っている」という段階でも構いません。
むしろその段階での相談が、最も多くの選択肢を確保できます。
ツギテラスへのご相談
「自社の売却タイミングはいつが最適か」「今の業績で売却できるのか」
——そのような疑問にお答えします。
ツギテラスでは代表社員が全案件に直接関与し、オーナーの状況を踏まえた具体的な売却タイミングのアドバイスを提供しています。
完全成功報酬型のため、相談・情報収集の段階では費用は一切発生しません。
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