この記事では、未上場会社の少数株を売却する方法を解説します。
未上場会社の少数株を売却するときの手続きフローチャートや流れ、実際にツギテラスにご相談をいただいた事例も掲載していますので、今まさに少数株売却に悩んでいる株主の方にも役立つことと思います。
この記事の監修者
弁護士 坂本 翔
東京弁護士会所属。2022年に弁護士登録後、主に企業法務を扱う弁護士事務所に入所。入所後は、株式譲渡に関する紛争や労務トラブル等の解決、法務デューデリジェンスなどの業務を経験。
はじめに|未上場会社の少数株は「持っていても困る・売れない」が現実
「未上場会社の少数株を保有しているものの、その扱いや処分に困っている」という相談が増えています。
―配当は出ない、株主総会招集通知も来ない、売ろうとしても買い手が見つからない― これが未上場会社の少数株主の実情です。
特に多いのが、「相続で意図せず自分が少数株主になってしまった」というケースです。
亡くなった親がオーナーであった未上場会社の株式を整理しないまま保有していたため、相続人がその株式を必然的に承継することとなり、突然少数株主になってしまうという状況です。
しかし、少数株主には、取得した株式を売却するための会社法上の権利があります。
正しい知識と手順で動けば、少数株を売却できる可能性があります。
本記事では、未上場会社の少数株売却の方法を実際の事例と会社法の手続きを交えながら解説します。
私はM&A業界に10年以上携わり、少数株売却の支援も手がけてきた立場から、未上場会社の少数株主が知っておくべきポイントをお伝えします。
未上場会社の少数株売却|典型的なトラブル事例
相続税の支払いに困った少数株主の事例
実際にご相談いただいたケースをご紹介します。
Aさんは、業歴60年を超える老舗企業(X社)の創業者である父親を亡くし、相続によりX社株式の30%を取得しました。
AさんはX会社の経営にはまったく関与しておらず、故郷を離れて専業主婦として生活していました。
父親が亡くなった後は、父親の右腕だった専務B(父親の共同創業者の息子)が社長に就任してX社のかじ取りをしています。
なお専務Bには弟Cがおり、二人とも役員としてX社に在籍し、それぞれ15%のX社株式を保有していました。
Aさんは自身がX社の経営に関与していないことから、BとCを含む役員陣に対し「自分が持っているX社の株を買い取ってほしい」と打診しました。
しかし、役員陣からは「今は買い取るお金がない」の一言で断られてしまいました。
実は、Aさんが相続したX社株には相続税が課せられることになります。
Aさんは、「X社の株式を現金に換えることができなければ、相続税の支払いにも困る状況になる」と改めて買取りを依頼したところ、X社から「簿価であれば買い取れる」という回答を受けました。
Aさんは、相続税評価のために株価算定をしていたため、その提示金額が評価株価の10分の1であることを知っていました。
これは明らかに安い価格です。しかしAさんは自分ではこの先どうすべきかわからなかったため、ツギテラスにご相談いただきました。
この事例は、未上場会社の株式の換金の難しさと、会社法への理解不足に付け入った典型的なケースです。
少数株主が直面する典型的な問題
少数株主が抱える問題として以下が挙げられます。
- 売ろうとしても買い手が見つからない
- 会社側から安すぎる買取価格を提示される
- 配当が全く出ない
- 株主総会招集通知が届かない
これらは未上場会社の少数株主として非常によくある状況です。
特に相続で意図せず少数株主になった方に多いのが、相続した自社株の相続税評価が想定以上に高く相続税が発生しているにもかかわらず売却が難しく現金化できないというケースです。
最悪の場合、自社株にかかる相続税の支払いそのものができないという事態に陥ります。
少数株売却の前に知っておくべき基礎知識
未上場株式の少数株売却は譲渡制限がある
未上場企業の株式のほとんどは「譲渡制限付き株式」です。株式を売却するためには、株主総会または取締役会(これを譲渡承認機関といいます)の承認が必要となります。
株式が譲渡制限付きかどうか、また譲渡承認機関が株主総会か取締役会かについては、登記簿謄本または定款に記載されています。
少数株を買ってくれる第三者はほとんどいない
未上場企業の少数株は、マジョリティ(過半数以上)の株式を売却するケースとは大きく異なります。
一般的に3分の2超の株式を取得できないと、買い手はほとんど現れません。
なぜなら少数株を取得しても会社の経営を自由に行うことができないからです。
例外的なケースとして、懇意にしている取引先が業務提携の延長線上で少数株を取得することがあります。
もし心当たりがある場合は打診してみる価値があります。
それでも見つからない場合は、少数株の買取に強い買い手ネットワークを有するM&A会社に探してもらうことが必要になります。
未上場会社の少数株売却|会社法を活用した3つのステップ
少数株を売却するための一般的な流れをフローチャートと合わせて解説します。

STEP1|情報収集
最初のステップは情報収集です。
会社の実態がわかる基礎的な書類を収集しましょう。
具体的には、①株主名簿と②決算書3期分は最低限集めておくようにしましょう。
なお、上記①②については、1株でも保有している株主であれば閲覧、謄写をする権利を有していますので、お手元にない場合は会社側に請求することをおすすめします(会社法125条2項、会社法442条3項)。
また、当該株主が議決権比率3%以上保有している場合は、決算書や総勘定元帳などの会計帳簿の閲覧、謄写をする権利もあります(会社法433条1項)。
しかし、これらの手続きについては会社側が上記資料の提出を拒むことが多いです。
そして、会社が提出を拒んだ場合は、当該株主が裁判所に開示請求を提訴して資料の入手を実現する必要があります。
裁判所の審理は長期間に及ぶため、場合によっては数ヶ月程度の時間を要する可能性があります。
これらの情報を集めたら、STEP2に進みます。
STEP2|買い手を探す
次のステップは買い手を探すことです。
最も一般的な方法は、会社に対して直接買取りを求めることです。
しかし実際には、先の事例のように、会社に極端に安い買取価格を提示されて折り合わないケースが多いです。
その場合は、会社以外の第三者への売却を検討します。
例えば、懇意にしている取引先への打診や、少数株の買取りに強い買い手ネットワークを持つM&A会社への相談が有効です。
もしも買い手が見つかったら、会社に対して「この買い手に株式を譲渡したい」という譲渡承認請求を提出します。
会社が承認すれば買い手への売却が完了します。
なお、会社が株主から譲渡承認請求を受けてから2週間以内に承認・不承認の通知をしない場合には、会社は当該譲渡を承認したとみなされます。
会社が不承認とした場合はSTEP3に進みます。
STEP3|会社に買取請求を提出する
(1)株主から会社に対する買取先指定請求の実施
会社が譲渡を承認しない場合でも、株主は、①会社又は②会社の指定する買取人(「指定買取人」といいます)に対して自分が保有する株式を買い取らせることができます。
もっとも、上記①②のいずれの方法を会社に行わせるためには、譲渡承認請求を行う段階で、会社または指定買取人が株式を買い取ることを請求する旨を併せて記載する必要があります(会社法136条、137条、138条1号ハ及び2号ハ)。
株主は、この手続きを行うことによって、会社が株式譲渡を承認しない場合に、会社に対して、①会社自ら買い取るか、②指定買取人を指定するといういずれかを選択させることができます。
株主から買取請求を受けた会社は、①会社が株式を買い取る場合には、会社が譲渡を承認しない通知を行った日から40日以内に、当該株主に対して会社が株式を買い取る旨を通知する必要があります(会社法143条1項、145条2号)。
一方、②会社が指定買取人に株式を買い取らせる場合には、会社が譲渡承認しない通知を行った日から10日以内に、当該株主に対して指定買取人が買い取る旨を通知する必要があります(会社法142条1項、145条2号)。
上記の株式買取通知を送付した後、会社は、1株あたり純資産額に会社が買い取る株式の数を乗じて計算した金額を法務局に供託した上で、その際に発行される供託証明書を、上記の買取通知と共に少数株主に送ります。
なお、この供託証明書を送付しない場合、会社は第三者への譲渡を承認する旨の決定をしたものとみなされることになります(会社法145条3号、会社法施行規則26条1号)。
(2)1株当たりの株式の価格の決定
株主が会社から株式買取通知を受けた時点で、「株主が会社に対して株式を売却する」という内容の売買契約が成立します。
なお、この売買手続きは、①株主が売却をキャンセルした上で、②会社または指定買取人がそのキャンセルに同意しない限り、この売却手続きは進むことになります(会社法143条1・2項)。
しかし、この時点ではまだ株式の売却価格(1株当たりの金額)はまだ確定していません。
その後、売却価格について株主と会社との間で交渉しますが、会社側は低い株価(配当還元方式など)、株主側は高い株価(時価純資産やDCF法など)を主張するため折り合わないことがほとんどです。
価格が折り合わない場合、株主は、株式買取通知を受けた日から20日以内に、裁判所に対して売買価格の決定の申立てをすることができ、裁判所は最終的に双方の主張を鑑みて価格を決定します(会社法144条2項、4項)。
なお、価格が折り合わない上に上記期間内に裁判所への申立てを行わない場合には、株式の価格は1株当たり純資産額に会社が買い取る株式の数を乗じた額をもって、1株当たりの売買価格を決定することになります(会社法144条5項)。
その後、少数株主は裁判所が決定した金額を、供託金(法務局に供託されたお金)から受取ることができます。
仮に供託金が不足する場合、株主は会社に対して追加の金銭の支払いを求めることができます。
少数株売却に数年かかる理由と早期に動くべき理由
なぜ少数株売却には数年かかるのか
仮に株式の売却価格が折り合わない場合、裁判所による価格決定だけで1〜2年の期間がかかります。
それ以外にも会社の状況を把握するための情報収集期間、会社が情報開示に応じない場合の対応期間、買い手を探す期間などが加わると、合計で数年の期間が必要になることもあります。
特に、少数株主と会社が対立している状況では、これらのすべてのプロセスに時間がかかります。
そのため、少数株を売却するときは、数年かかることを前提に早期に動き出すことが重要です。
相続税の支払い期限がある
特に相続で少数株主になった場合、相続税の申告・納付期限は相続開始から10ヶ月以内です。
(参考:国税庁 相続税の申告と納税)
株式が換金できていない段階でも相続税の支払いが発生するため、未上場株の評価が高い場合はより一層早めに動き出す必要があります。
なお、相続税の支払いがどうしてもできないという場合には延納、物納の制度があります。
延納、物納には申請が必要ですので、活用の際は必ず税理士に相談をするようにしましょう。
(参考:国税庁 延納・物納申請等)
少数株主が絶対にやってはいけないこと、やった方がいいこと
焦って安すぎる価格で売却しない
最もやってはいけないのは、売却を焦って会社の言い値で不当に安い価格での売却に応じてしまうことです。
会社側は少数株主が会社法の知識を持っていないことを利用して、低い価格を提示してくることがあります。
他の少数株主と連携する
逆に自分以外の少数株主がいる場合、それら少数株主の意向を聞くことはやった方がよいです。
自分以外にも会社の少数株を売却したいと考えている株主がいる場合は、その株主と連携して会社に対して買取を求めることで会社へのプレッシャーになります。
共闘してくれる株主を事前に探しておくことも有効な手段です。
少数株売却の第一歩|まず会社の情報を集める
株主には会社への情報開示請求権がある
未上場会社の少数株を売却するためには、まず会社の情報を集めることが重要です。
少数株の場合もM&Aと同じく買い手は、その会社に魅力を感じて少数株を取得します。
そのため最低限の情報として、以下の資料を必ず準備してください。
- 株主名簿
- 直近3年分の決算書
- 直近3年分の株主総会招集通知(あれば)
なお、株主は、1株でも株を保有していれば株主名簿、計算書類等(決算書)の閲覧・当社を会社に請求することができます。
さらに、議決権ベースで3%以上の株式を保有していれば、原則として会計帳簿(総勘定元帳など)の開示を請求することができます。
会社の経営に一切関与していない場合でも、株主である以上これらの権利は行使できます。
まずは情報収集から始めてください。
少数株売却は早めの相談が重要
少数株の売却には数年かかる可能性があります。
相続税の支払い期限や、会社の業績変化など時間的な制約が存在します。
「どうすればいいかわからない」という段階でも構いません。
まずは専門家への相談から始めることをおすすめします。
よくある質問|未上場会社の少数株売却
少数株でも会社に買取りを求めることはできますか?
はい、できます。
会社法上、少数株主は譲渡承認請求を通じて会社に買取りを求める権利があります。
ただし価格については双方の交渉または裁判所の決定が必要になることが多いです。
相続で取得した少数株は必ず売却しなければなりませんか?
売却の義務はありません。
ただし相続した未上場会社の少数株も相続財産となるため相続税が発生する場合があります。
少数株を換金できない場合でも税の支払いは発生します。
売却を検討している場合は早めに動き出すことをおすすめします。
少数株の適正な売却価格はどのように決まりますか?
未上場株式の価格算定方法には純資産方式・DCF法・配当還元方式などがあります。
どの方式を採用するかで価格が大きく変わるため、専門家による算定が重要です。
双方の交渉で折り合わない場合は裁判所が決定します。
少数株売却の費用はどれくらいかかりますか?
専門家への相談費用・弁護士費用・裁判費用などが発生する可能性があります。
ツギテラスでは初回相談は無料で承っています。
ツギテラスの少数株売却支援について
ツギテラスでは、行政書士である代表社員が少数株売却の支援を行っています。
会社法の手続きに精通しているだけでなく、少数株を取得してくれる買い手のネットワークも持っています。
また、先々の裁判を見据えて、未上場会社の少数株売却、会社法に精通した弁護士と早い段階で連携していきます。
「会社から不当に安い価格を提示された」「相続で株を取得したが換金できない」「どこに相談すればいいかわからない」
そのような方はお気軽にご相談ください。

